研究内容

Si上III-V族メンブレン光集積回路

LSIの高速化・高集積化はムーアの法則に従い素子の微細化・低電圧化によって達成されてきましたが、将来的には更なる微細化に伴い素子間の配線におけるRC遅延や発熱、高抵抗化といった問題が懸念されておりこれらがLSI全体の性能を律速してしまう要因になると考えられています。その解決策の一つとして近年有望視されているのが電気配線の光配線への代替です。本研究室では電気配線に代わる光配線技術として薄膜に加工したIII-V族半導体を用いたメンブレン光集積回路(Membrane photonic integrated circuits)を提案・研究しています。メンブレン光集積回路においてはメンブレン半導体コア層の上下に低屈折率材料を用いたクラッド層を形成することで高屈折率差導波路構造を実現できます。これにより従来構造に比べ小型かつ極低消費電力動作が可能なデバイスが実現できます。実際に世界最高高速動作効率の分布反射型レーザなどを実現しています。 またこの構造は、人工知能の一種である機械学習に向けた代表的非線形関数であるReLU関数と同等の機能を光で実現することが可能です。これまでに線形関数の光集積回路は提案されていましたが、この構造によってキーエレメントである非線形関数も実現することができるようになります。 さらに、光子-光子共鳴という現象をこのメンブレン半導体レーザに導入することにより、将来の6G無線通信に向けたRadio over Fiber(ROF)という無線信号をアンテナまで光で運ぶ技術の光源として利用可能です。

III-V/Siハイブリッド光集積回路

近年のインターネットトラヒックの増大に伴い、高効率・大容量な光ルーティング機能を有する大規模な光集積回路が求められています。そのアプローチとして、Siプラットフォーム上へIII-V族半導体による光源や増幅器といった光アクティブデバイスを作製するIII-V/Siハイブリッド集積が有効です。Siは通信波長帯において透明で低損失かつ小型の光回路を作製できることに加えて、CMOSプロセスを利用した低コストで大規模な光電集積が可能であり、InPなどのIII-V族半導体は直接遷移半導体であるため、間接遷移半導体のSiでは作製困難な発光デバイスを実現できます。本グループでは、ハイブリッド集積におけるInP光源とSi光回路それぞれの特性とそれらを組み合わせた構造に着目し、InPもしくはSiだけでは実現困難な多機能な光電融合集積回路を研究しています。これにより将来の分散コンピューティングに向けた毎秒10Tbit級の光トランシーバを作製するための研究を行っています。また、この技術は、別に取り組んでいる光レーダー(LiDAR)の光源としても有望であり、大きな注目を集めています。

異種材料集積技術

異種材料集積は、複数の材料の「いいとこどり」をするために将来の必須技術です。例えば、別に取り組んでいるハイブリッド光集積回路は、この技術の使用が前提となっています。糊を使わず接合するというところがポイントです。ただし、使う材料、アプリケーションによってどの異種材料集積技術を使うかは異なります。我々は、表面活性化常温接合、プラズマ活性化接合、親水化接合、そして樹脂接合など複数の技術を有し、さらに、ウェハ接合だけでなく、大型基板に小片チップを大量に接合するChip-On-Wafer接合など形態も様々です。

    

ダイヤモンドNVセンター

    
    

ダイヤモンドNVセンターは、磁界センサーの素子材料としての応用が期待されており、小型・大型センサーを実現するために、光集積回路の採用が検討されています。 我々の研究室では、ダイヤモンドNVセンターの吸収特性を測定し、その吸収波長ピークに特化した光集積回路を設計しています。

    

東京工業大学 工学院 電気電子系 西山研究室

〒152-8550 東京都目黒区大岡山2-12-1-S9-1 03-5734-2555 ee.e titechnishiyama

西山教員室・西山研学生室[宮本研共通](南9号館 701号室・706号室・707号室)測定室(南9号館 604号室・502号室・201号室)
クリーンルーム(南9号館 202号室・B1F 露光室)超高速エレクトロニクス研究棟