研究:活性層分離型DFBレーザ

Fig.1 共振器構造
Fig.2 活性層分離型DFBレーザ
Fig.3 活性層分離型DFBレーザの
電流-光出力特性
Fig.4 発振スペクトル

Fig.5寿命試験前後の特性比較

DFBレーザとは? (Fig.1)

最も簡単なレーザ構造にファブリ・ペロー共振器を用いたものがあります。これをファブリ・ペロー(FP)レーザと呼び、両端面の反射鏡により光を閉じ込めて発振するものです。しかし、FPレーザは発振波長が不安定であるという欠点があり、定常状態で注入電流や温度の変化があると発振波長が変化するモードホップという現象を起こしてしまいます。また、定常状態で単一波長動作する場合でも高速変調を行うと多モード動作になりスペクトル幅が広がってしまい、長距離・高速伝送には向きません。長距離・高速伝送を実現するためには高速変調時にも発振モードが安定して得られるレーザ構造が必要です。そこで、波長選択性を持つ共振器構造が実現されました。その構造の1つが分布帰還型(Distributed Feedback : DFB)です。これは共振器内部に回折格子が形成されており、ある特定の波長のみが強め合う構造となっています。この構造を用いたレーザをDFBレーザといい、単一波長動作が可能です。Fig.1に各レーザ構造に関する簡単な図を示します。活性層分離型DFBレーザに関しては次に説明します。

〜活性層分離型DFBレーザとは?〜 (Fig.1&2)

我々の研究室では従来のDFBレーザとは少し異なった構造のDFBレーザを作製しています。従来のものは回折格子を活性層の上部もしくは下部に形成します。それに対して、我々が作製している活性層分離型DFBレーザは、活性層部分を周期的に加工して回折格子を形成します。この構造を用いることで次に述べるように低しきい値・単一モード安定動作などの利点があります。Fig.2に本レーザの図と回折格子部分の構造を示します。2層ある活性層が周期的に加工されています。

〜特徴①:低しきい値電流動作〜 (Fig.3)

活性層部は光強度が強いため、その部分で屈折率を変化させることで光が屈折率変化を大きく感じます。その結果、共振器全体としてみたときの反射率をより高くすることができます。しきい値電流は反射率が高ければ高いほど下がるので、反射率を高めて光を共振器内部に強く閉じ込めることにより、低しきい値電流動作が実現できます。また、しきい値電流は活性層体積に比例するため、活性層部分をエッチングして活性層体積を減らせたこの構造を用いることで、さらにしきい値電流を低減することが可能です。Fig.3に作製した素子の電流−光出力特性を示します。最低しきい値電流0.7mAでの動作を実現しており、その低電流動作特性を確認しています。

〜特徴②:安定した単一モード発振〜 (Fig.4)

また、このレーザは安定した単一モード動作が可能であることが理論的・実験的に確認されています。従来型のDFBレーザにおいては均一の回折格子ではストップバンドの両端で2モード発振してしまうため、回折格子にΛ/4シフト等の単一モードを得るために特別な構造を導入する必要がありました。それに対して、この活性層分離型DFBレーザでは利得整合効果と呼んでいる効果により、均一回折格子でもストップバンドの長波長側で単一モード発振を実現できます。利得整合効果とは、回折格子の利得領域(活性層のある領域)と共振器内部の電界が強い部分が一致する効果であり、ストップバンドの長波長側モードがこの利得整合効果により短波長側のモードに比べて高い利得を得ることができるため、Fig.4に示すように長波長側が選択的に発振します。

〜活性層分離型DFBレーザの寿命〜 (Fig.5)

活性層分離型DFBレーザは上でも述べたように活性層を直接加工して作製しています。そのため、その長期的な動作特性の安定性が懸念されていました。そのため室温連続動作にて寿命測定を行いました。その結果、8000時間以上の連続動作を確認し、この構造が実用レベルに達していることを実証しました。このことから活性層を直接加工する手法が有用であることが分かりました。Fig.5に試験開始前と開始後4200,7300時間の電流−光出力特性、発振スペクトルを示します。測定温度の変化に伴う特性の変化は見られるものの、目立った劣化が見られないことが分かります。

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