研究:トランジスタレーザ

Ⅰ. 概要

近年、動画をはじめとするリッチコンテンツの増加やスマートフォン,タブレットといったデバイスの普及に伴い、インターネットトラフィックが著しく増加しています。この増え続けるネットワーク需要を支えているのが光通信です。光通信の光源には半導体レーザが広く用いられていますが、本研究室では次世代高速光通信を見据えた新しい光源デバイス「トランジスタレーザ」の研究を行っています。

これまでに、トランジスタレーザ動作の数値解析、トランジスタレーザ素子構造の基礎となるAlGaInAs活性層を有する高品質埋め込みヘテロ構造の検討、そしてトランジスタレーザ素子の作製を行い、長波長帯トランジスタレーザとして初めての室温連続発振を達成し、構造を変更することでレーザ特性の改善を達成しています。

Ⅱ. 素子構造

トランジスタレーザはヘテロ接合バイポーラトランジスタレーザ(HBT)に発光領域である活性層を導入した構造となっています(図1)。従来の半導体レーザと異なり、エミッタ,ベース,コレクタの3端子を有しています。エミッタから注入されたキャリアをコレクタ電圧により引き抜くことで、活性層への高速なキャリア供給を可能とし、高速動作が実現できます。

活性層にはAlGaInAs材料を用いています。この材料を用いることで、大きな光利得が得られるだけでなく、良好な温度特性を有する素子も実現できます。これに加え、トランジスタレーザは埋め込みヘテロ構造を採用しています。この構造では活性層への光閉じ込め、また活性層への電流狭窄が起こり、低電流かつ高効率な動作が可能となります。

Ⅲ. 実験結果

ベース層のバンドギャップと膜厚を変えて二つの素子を作製しました。以下に実験結果を示します。まず、バンドギャップ1.19 eV・ベース層膜厚100 nmの素子です。図2はベース接地における光出力を示したものです。長波長帯npnトランジスタレーザとして初めて、室温連続発振動作に成功しました。コレクタ-ベース電圧が0 Vの時、しきい値エミッタ電流18 mA,外部微分量子効率(両面)22%が得られました。図3にはエミッタ接地におけるトランジスタ特性を示しています。電流増幅率0.02程度が得られました。

図4はバンドギャップ1.06 eV・ベース層膜厚200 nmの素子と光出力特性を比較した図です。電流増幅率は0.02と等しい素子において、バンドギャップ1.19 eV・ベース層膜厚100 nmとすることで、しきい値電流、および効率の改善に成功しました。

今後は発振特性を維持したまま電流増幅率の制御を行い、高速動作の実現を目指します。

List of reports

Journal Papers

International Conferences

Domestic Conferences

東京工業大学 工学院 電気電子系 西山研究室

〒152-8550 東京都目黒区大岡山2-12-1-S9-1 03-5734-2555 ee.e titechnishiyama

西山教員室・西山研学生室[宮本研共通](南9号館 701号室・706号室・707号室)測定室(南9号館 604号室・502号室・201号室)
クリーンルーム(南9号館 202号室・B1F 露光室)超高速エレクトロニクス研究棟