研究:量子細線レーザ

極微細構造を応用した高性能光デバイスの実現

図1(a)に示す量子薄膜構造は、光通信用だけではなく、光ディスク用など、さまざまな用途の半導体レーザに応用されてきました。そして、図1(b)、ならびに図1(c)に示すように量子構造が量子細線、さらには量子箱と低次元化する、つまり、キャリアの自由度の次元が減ると、図1に示すように状態密度関数が先鋭化していきます。そして、これに起因して、図2に示すように量子細線・量子箱構造では光利得のピーク値が高くなります。その結果、量子細線・量子箱構造を活性層にもつ半導体レーザでは、低消費電力及び高効率、さらには変調速度やスペクトル線幅などの特性も飛躍的に向上させることができます。

これまでに、エッチングによる極微細構造の形成、量子ドット構造の作製法として広く用いられている自己組織化成長法、パターン基板や傾斜基板上への選択成長法を用いて、量子細線・量子箱レーザの研究が行なわれてきました。我々は、他の作製法と比べて、任意極微形状を形成できる点及び活性層の周期的配置による分布帰還 (DFB) レーザへの応用の観点で有利と考えられる電子ビーム露光・ドライエッチング・有機金属気相成長法による埋め込み再成長を用いて、量子細線・量子箱レーザの作製を行なってきました。そして、世界最高水準の極微細加工技術を用いることにより、低損傷極微細構造の形成、さらにはドライエッチング及び再成長法を用いた量子細線レーザとして、初めて室温連続動作を実現すると共に、その寿命測定を行った結果、12,000時間以上経過後においても良好な特性を維持していることを確認し、この作製法が実用デバイスの作製に適用可能であることを明らかにしてきました。

(Ⅰ) 歪補償量子細線レーザ

これまでに、電子ビーム露光法・CH4/H2反応性イオンエッチング・2段階有機金属気相成長法を用いたいわゆるトップダウン的作製法により実現された量子細線レーザ(活性層幅23nm、5層量子細線構造)として世界で初めて室温連続発振を実現しております。また、その寿命測定を行った結果、12,000時間以上経過後においても良好な特性を維持していることを確認しております。また、本作製法により形成された多層量子細線構造がサイズ均一性に優れていること(細線幅の標準偏差±2nm以下)も明らかに致しております。

さらに、狭細線構造 (活性層幅14nm)を有する5層量子細線レーザを実現し、自然放出光スペクトルの測定と理論解析との比較から、高エネルギー側における量子薄膜レーザよりも急峻なスペクトル形状は、キャリヤの横方向量子閉じ込め効果に起因していることを明らかに致しております。

今後、サイズ及び各量子井戸層の組成・層厚分布を低減することによる狭利得スペクトル特性の実現、ならびに高反射率反射鏡とDFB構造の付加により低電流・高効率動作の実現を目指します。

(Ⅱ) 機能光デバイスのための新しい極微構造の探索

量子閉じ込め効果が顕著な量子細線構造では、細線に平行な方向の電界成分を有する双極子モーメントが強くなります。さらに、その細線幅を変えることにより、偏波異方性を有した状態で発光・吸収に寄与するエネルギー準位を変えることができます。そこで、線幅及び長さの異なる量子直方体構造を結合させた低次元量子構造のデバイス応用の可能性を理論・実験両面から研究を行います。一例として、下図に示すような量子直方体構造をL字型、あるいはT字型に結合させた低次元量子構造を作製し、制御光と信号光を異なる偏波方向、あるいは異なる入射方向とする光-光制御デバイス及び波長変換レーザへの可能性を探索します。

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